東京地方裁判所 昭和54年(ワ)4121号 判決
一 原告が本件特許権を有すること、本件明細書の特許請求の範囲の記載が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。
二 原告は被告の製造販売している段梯子の組立方法は請求の原因4で主張するとおりであるというが、本件全証拠によつてもこれを認めることはできず、被告の販売している段梯子(以下、「被告製品」という。)を表示するものであることについて当事者間に争いがない別紙第二目録の図面及び弁論の全趣旨により被告製品の組立工程を示す写真及び説明図であることが認められる乙第一〇号証の一ないし二七並びに被告製品の一部分であることについて争いのない検乙第一号証によれば被告製品の構造は別紙第三目録記載のとおりであり、その組立方法は、被告が被告の主張1(一)ないし(五)で主張するとおりであることが認められる。
三 そこで、被告製品の組立方法を本件発明の段梯子の組立方法と対比すると、両者には、被告が被告の主張2(一)ないし(七)において主張するとおりの差異が存することが認められ、この事実によると、被告製品の組立方法は本件発明の技術的範囲に属さないことが明らかである。
四 なお、原告が請求の原因6で主張する被告が製造販売する段梯子は特許法第一〇四条の規定により本件発明の組立方法により生産されたものと推定すべきである旨の主張は、同条の規定の趣旨に照らし、その主張自体失当であることが明白であり、採用しない。
五 よつて、被告製品の組立方法が本件発明の技術的範囲に属することを前提とする原告の本訴各請求はいずれもその余の点を判断するまでもなく理由がないからこれを棄却することとする。
〔編註〕 本件における被告の主張は左のとおりである。
2 本件発明と被告の組立方法を対比すると、次のとおり相違する。
(一) 本件発明においては、各梯子段の一端縁に梯子段一段の間隔以下の長さにした嵌挿筒を縦設する構成になつているのに対して、被告の組立方法では、梯子段7の一段の間隔より長い主柱駒部材を縦設する。
(二) 本件発明においては、支柱として用いるために運搬に簡単な程度の長さにした管体を必要な本数だけ造る構成とされているのに対して、被告の組立方法においては、本件発明における管体よりなる支柱はなく、主柱駒部材と最下部駒部材と最上部駒部材の三種類の駒部材によつて柱を構成する。
(三) 本件発明においては、接圧板を定着し、その接圧板とこれを固定した支柱の一部をコンクリート基礎中に埋入し、その接圧板を基礎中にあらかじめ埋入してあるアンカーボルトに着脱自在に固定して右支柱を縦設する構成とされているが、被告の組立方法では、接圧板に相当するものとして台座があるけれども、右は基礎中に埋入しないし、また、台座はコンクリート床面にホールインアンカーを打ち込み、組立後に水平度、高さ等の調整が可能となるようにされている。
(四) 本件発明においては、上記梯子段を有する嵌挿筒を支柱に嵌挿して鉄板ビスその他着脱自在の固着具をその嵌挿筒に外側壁から螺着して両者を定着する構成とされているのに対して、被告の組立方法においては、筒壁の外側から螺着して定着するのではなく、駒部材を上下に凹凸嵌合したのち連結ボルトで締めつけて一体化して連結する。
(五) 本件発明においては、上記支柱の上に別の支柱を着脱自在に縦に配置し、それ等支柱の接続部に嵌挿筒を嵌挿して上記固着具定着手段を上下の支柱に施して上下支柱を接続固定し、このようにして所求の高さまで支柱を縦設すると共に、上記梯子段を有する嵌挿筒を支柱に必要な数だけ定着する構成とされているのに対して、被告の組立方法においては本件発明にいう支柱がなく、したがつて支柱を接続する筒及び鉄ビス等を要しない。
(六) 本件発明においては、運搬に簡単な程度の長さにして造つた棒杆を各支持杆に定着し、棒杆の各端縁部を互いに接続することによつて横杆を形成して手摺とする構成とされているのに対して、被告の組立方法においては、手摺は運搬に簡単な棒杆ではなく、長尺の金属帯板を使用し、したがつて端縁部の接続を要しない。
(七) 本件発明においては、支持杆と棒杆との定着にはボルトナツトその他の固着具を以てなす構成とされているのに対し、被告の組立方法においては、棒杆は使用せず、金属帯板その他部材の定着には拘束片と締付ボルトを使用する。